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お墓ができるまで

how a grave is built

場所を決め、石を選び、形と文字を決め、基礎を打ち、石を据え、法要をして、はじめて「お墓」になります。
どこで迷いやすく、何を先に確かめておくとよいのか。建てるまでの順番を、ひととおりまとめました。

Place · 場所を決める

どこにでも、建てられるわけではありません。

まず区画から。石の話は、そのあとです。
The plot comes first — the stone later.

ご遺骨を納められる場所は、法律で決まっています。埋葬や焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域で行ってはならないとされ(墓地、埋葬等に関する法律 第四条第一項)、その「墓地」とは、墳墓を設けるために都道府県知事——市や特別区では市長・区長——の許可を受けた区域を指します(同法 第二条第五項)。札幌市のような市では、市長の許可ということになります。

ですから最初にすることは、どの墓地に区画を得るかを決めることです。石の形や値段の話は、そのあとについてきます。

Temple · 寺院墓地

お寺の境内に

檀家になることが条件とされる場合があります。法要や供養を身近にお願いできる一方、宗旨・宗派の条件が定められている墓地があります。

Public · 公営墓地

自治体が運営

宗旨を問わない区画があり、費用が抑えられるといわれます。申込みの資格や期間が決まっていることがあり、募集を待つ形になる場合があります。

Private · 民営霊園

公益法人・宗教法人など

区画や形の選択肢が広く、募集の時期を問わず申し込める区画もあります。指定石材店が決まっている場合があります。

確認しておきたいこと①
宗旨・宗派の条件はあるか。檀家になる必要があるか。
確認しておきたいこと②
承継者の条件。継ぐ人がいないと使えない区画か、承継者を必要としない区画か。
確認しておきたいこと③
区画の広さと、建てられる高さ・形の決まり。洋型が不可、外柵の仕様が指定、といった決まりがある区画もあります。
確認しておきたいこと④
年間の管理費と、支払いがいつまで続くか。
確認しておきたいこと⑤
冬の除雪。雪の深い土地では、区画までの通路が除雪されるかどうかで、冬のお参りができるかが決まります。
確認しておきたいこと⑥
指定石材店の有無。決まっている場合、石材店を選ぶことはできません。
💡 区画を得ることは「土地を買う」ことではありません。永代使用権——その区画を使う権利を得る形をとります。転売や譲渡ができない、承継者がいなくなると返還になる、といった決まりがあるのが通例とされます。契約の前に、返還の条件まで読んでおかれると安心です。
Stone · 石を選ぶ

見本帳の小片では、分かりません。

同じ名前の石でも、採れた場所と等級で表情が変わります。
Even the same named stone varies by quarry and grade.

墓石には花崗岩(御影石)が使われます。選ぶときに見るのは色目だけではありません。水を吸いにくいか、硬いか、目(模様)はどうか。

石の名前は同じでも、丁場(採石場)や等級で色も価格も変わるとされます。見本帳の小さな片ではなく、できるだけ大きな面で見せてもらうのが確かです。

吸水率
水を吸いにくい石ほど、汚れや苔が入り込みにくいとされます。寒い土地では、吸った水が凍って傷むおそれも小さくなると説明されます。
硬さ
硬い石は傷がつきにくい一方、加工に手間がかかります。
色と目
白御影、青みのある石、黒御影。石は自然のものですので、見本と実物で模様が違うことがあります。
産地
国産では庵治石(香川)、大島石(愛媛)、本小松石(神奈川)などが知られます。近年はインド産・中国産の石も使われています。
くわしくは
銘石の話は 墓石のページ に書いています。
Design · 形と文字を決める

文字は、原寸で確かめる。

彫ってしまってからでは、直せません。
Once carved, it cannot be undone.

Traditional · 和型

縦に長い形

竿石・上台・中台を積む、古くからの形。「◯◯家之墓」「先祖代々之墓」や、宗派の題目・名号を刻みます。

Western · 洋型

横に低い形

雪や風の影響を受けにくいとされ、短い言葉を大きく刻めます。区画によっては高さの決まりで洋型になることもあります。

Free · デザイン墓石

家ごとに考える形

曲線や彫刻、好きだった花をかたどることも。霊園によって形・高さ・色に決まりがあります。

刻む文字
和型は家名や題目・名号。洋型は一文字・二文字や、故人が好きだった言葉を刻むことも。宗派によって刻む言葉が異なります。
原寸の版下
彫る前に、実物大の版下(はんした)で書体と配置を確認させてもらってください。画面や縮小した図では、印象が変わります。
書体
楷書・行書・隷書など。彫り込みか浮き彫りか、色を入れるかでも見え方が変わります。
側面・裏面
建立年月と建立者名を刻むのが通例とされます。生前に建てた場合、建立者名に朱を入れることがあります。
墓誌を建てるか
納められた方を記す板石。建てず、竿石の側面に刻む形もあります。 → 墓誌
各部の名前
竿石・上台・中台・カロート・花立・水鉢・香炉・外柵。 → 図で見る
※ 刻む言葉・書体・彫り方は、寺院や霊園の決まり、宗派の考え方によって異なります。決める前に、菩提寺と霊園の管理者にご確認ください。
Quote · 図面と見積もり

「一式」では、比べられません。

何が入っていて、何が入っていないかを見ます。
What the quote includes — and what it leaves out.

見積もりで困るのは、金額そのものよりも何が含まれているのかが分からないことです。「墓石工事一式」とだけ書かれていると、あとから追加が出たときに比べようがありません。

項目に分けてもらえないか、聞いてみてください。比べるために必要だと伝えれば、話は通ります。

石の代金
使う石の種類と、量(才数・立方)。
加工と彫刻
磨き、面取り、文字彫刻、家紋、彫刻の意匠。
基礎工事
掘削、砕石、鉄筋、コンクリート。寒冷地ではここが効きます。
据付・運搬
現場までの運搬、重機の手配、据付の手間。搬入経路が狭い・階段がある場合は割増になることがあります。
外柵・付属
外柵、墓誌、卒塔婆立て、物置石、灯籠。含まれているか、別かを必ず確認。
含まれないもの
墓地の永代使用料、年間管理費、開眼供養のお布施、納骨の費用。これらは石材店の見積もりの外です。
保証とアフター
傾いたとき、欠けたときの扱い。何年、どこまで面倒を見てもらえるかを、書面で。
📋 相見積もりを取るときは、同じ条件で。石の種類・大きさ・外柵の有無を揃えないと、安いほうが小さいだけ、ということが起こります。指定石材店がある霊園では、そもそも相見積もりが取れません。
Foundation · 基礎工事

見えなくなる部分が、いちばん効く。

完成してしまえば、誰にも見えないところです。
The part nobody sees once the stone is set.

お墓が傾くかどうかは、石そのものよりその下でどう支えているかで決まります。そして基礎は、据え付けてしまえば二度と見えません。

寒い土地では、凍上(とうじょう)——地中の水分が凍って地面が押し上げられる現象への備えが要ります。現象そのものは お墓のいま に断面の図で説明しています。

基礎工事のイメージ図 — 区画に鉄筋を格子に組み、型枠を当てて、寸法を測っているようす
イメージ図です。鉄筋の組み方や厚みは、現場の条件によって異なります。
凍結深度
寒冷地では、土が凍る深さより下まで基礎をとるという考え方がとられます。深さの目安は地域によって異なります。
鉄筋とコンクリート
鉄筋を組んでコンクリートを打つ形が一般的とされます。厚みと配筋は見積もりで確認を。
水抜き
基礎の中に水が溜まらないよう、水抜きの穴や砕石層を設けます。
見積もりで聞くこと
「この土地の凍結深度をどう見て、基礎をどうとりますか」と聞いてみてください。答えを聞くと、何にお金がかかっているのかが見えてきます。
❄ 北海道で建てるなら、基礎の仕様が揃っていない見積もりは比べられません。金額だけを並べる前に、基礎の考え方を揃えてから比べてください。 → 凍上の図/上台・中台/外柵
Setting · 据付から、開眼供養まで

石を建てて、はじめて「お墓」になります。

建てただけでは、まだ石です。
A stone becomes a grave through the rite.

  1. 基礎工事。掘削して砕石を敷き、鉄筋を組んでコンクリートを打ちます。養生の期間をとります。
  2. 外柵の据付。区画の囲いから組んでいきます。 → 外柵
  3. カロート(納骨室)の設置。ご遺骨を納める空間を作ります。 → 納骨室
  4. 台石・竿石の据付。石と石は、接着や芯棒で留めます。 → 竿石
  5. 付属品の設置。花立、水鉢、香炉、墓誌、卒塔婆立て。
  6. 建てたあとの法要。仏式では開眼供養(かいげんくよう)——お性根を入れる法要を行うのが通例とされます。ただし浄土真宗では「お性根を入れる」という考え方をとらないと説明され、「建碑法要」「入仏法要」などと呼ばれます。神式は仏教の法要とは別の系統で、「御霊入れ」と呼ばれることがあります。呼び名だけの違いではありませんので、菩提寺・神社にお尋ねください。
  7. 納骨。墓地の管理者は、埋葬許可証・改葬許可証・火葬許可証を受理したあとでなければ埋葬や焼骨の埋蔵をさせてはならないと定められています(同法 第十四条第一項)。当日は許可証をお持ちください。日取りを法要に合わせる形もあります。
据付のイメージ図 — 外柵の石を据えながら、下げ振りで垂直を見ているようす
イメージ図です。据え方も道具も、石材店によって異なります。
🕯 この法要の日取りは、菩提寺・神社のご都合が先です。石材店の工期だけで決めると、あとで動かせなくなります。四十九日や一周忌に合わせたい場合は、逆算して早めにご相談ください。
Hokkaido · 北海道の段取り

春に建てるなら、秋までに相談。

着工できる季節が限られるぶん、逆算が要ります。
The season decides when work can start.

Winter · 冬

着工できない時期がある

凍った地面を掘ることも、雪の中で据え付けることも難しくなります。時期によっては、着工を待つことになります。

Spring · 春

雪どけを待ってから

雪が引いてから基礎を打ち、養生の期間をとって据付。思い立ってすぐ、とはいきません。

Backward · 逆算

法要から逆算する

お盆や一周忌に間に合わせたいなら、その前の年の秋のうちに相談——そう考えておくと、慌てずに済みます。

工事の時期のイメージ図 — 春から秋にかけてクレーンで石を吊り、職人が据え付けているようす。冬の欄には「冬期(着工待機・天候に左右)」と書かれている
イメージ図です。着工できる時期は、天候・霊園・石材店の都合によって異なります。
❄ 冬のあいだに場所を決め、石と形を決め、見積もりを揃えておく。春になったら着工する。この順番にすると、一年のうちに収まりやすくなります。
Summary · まとめ

決める前に、五つだけ。

金額から入らず、ここから考えると迷いにくくなります。
Five questions, before the price.

  1. 誰が続けるのか。承継者を前提にできるか。できないなら、承継者を必要としない区画や、ほかの形も選択肢に入ります。 → お墓のいま
  2. 年に何回、無理なく行けるか。雪の季節を引いて数えてみてください。冬の除雪があるかどうかも、ここに効いてきます。
  3. 見積もりは、項目に分かれているか。「一式」で出てきたら、分けてもらう。含まれないもの(永代使用料・管理費・お布施)も確かめる。
  4. 基礎の考え方を、聞いたか。見えなくなる部分です。建ててから直すのは、たいへんです。
  5. 菩提寺に、相談したか。宗旨の条件、刻む言葉、開眼供養の日取り。石材店より先に、お寺です。

お墓を建てることは、一生に何度もありません。分からなくて当たり前ですし、何度聞いてもいいことです。

そして建てたあとは、花を供え、手を合わせる日々が続きます。その日々のほうが、ずっと長い。だから、通いやすさと、続けやすさから考えるのがよいと思います。墓前の花のことは 花立 と 供花のマナー に書いています。

Sources · 出典

このページの根拠について。

法令の条文と、書いていないことを記しておきます。

  • 墓地以外に埋葬・埋蔵できないこと|墓地、埋葬等に関する法律 第四条第一項「埋葬又は焼骨の埋蔵は、墓地以外の区域に、これを行つてはならない。」
  • 墓地の定義|墓地、埋葬等に関する法律 第二条第五項「この法律で『墓地』とは、墳墓を設けるために、墓地として都道府県知事(市又は特別区にあつては、市長又は区長。以下同じ。)の許可を受けた区域をいう。」
  • 納骨に許可証が要ること|同法 第十四条第一項「墓地の管理者は、第八条の規定による埋葬許可証、改葬許可証又は火葬許可証を受理した後でなければ、埋葬又は焼骨の埋蔵をさせてはならない。」
  • 金額|このページには金額を書いていません。石の種類・大きさ・区画・搬入経路・基礎の仕様によって大きく変わるため、ひとつのめやすとして示せるものではないと判断しました。種類ごとの平均購入価格(民間調査)は お墓のいま に出典つきで載せています。
  • 凍結深度の具体的な数値|地域によって異なり、当方で確認できていないため書いていません。石材店にご確認ください。

手続きの名称・必要書類・区画の決まりは、墓地や自治体によって異なります。作法や呼び名は宗派・地域・寺院や霊園の決まりによって異なります。本記事は一般に語られている内容をまとめたもので、一次資料で確認したものではなく、諸説あるものも含みます。実際に建てられる際は、菩提寺、霊園の管理者、石材店にご確認ください。